・血液検査の活用法 

 

血液検査結果の活用法
血液検査を、医師から手渡しでもらう場合は、検査結果を一緒に確認しながら気になっていることを尋ねてみましょう。

健康診断などで検査結果が郵送されてくるのではなく、医師から直接検査結果を渡された場合は、まず、その場で気になっていることを質問するようにしましょう。
「糖尿病はどうでしょう?」、「がんの心配はありますか?」、「どこか、引っかかった項目はありましたか?」など、難しく考えずに不安を感じていることを素直に言ってみることをオススメします。医師は検査結果を見ながら説明してくれるはずです。
血液検査の内容によっては、該当項目に関する測定をしていない場合もありますが、その場合は他にどんな検査をすれば不安が解決するかを教えてもらえます。


血液検査結果の数値の読み方
手渡しや郵送で受け取った結果用紙は、家に帰ってからしまいこむ前に、一度自分でじっくり見てみましょう。私自身が特にどの部分を見て、患者さんや受診者さんに何を説明しているのかも踏まえ、ポイントを解説します。

まずは貧血や炎症の有無をチェック
まず見ていただきたいのは、血液の濃さや白血球の数。検査結果用紙では以下の項目を見ることでわかります。

 

※なお、各正常値は検査法や施設によって多少異なります。また、正常値には一定の幅がありますが、本項の数字は見やすくするため目安となる値を示していますのでご注意ください。

赤血球(RBC)

赤血球の数を示す数値。 正常値は400万/μl

ヘモグロビン(Hb)

血液の濃さを示す数値。 正常値は12g/dl

ヘマトクリット(Ht)

血液の濃さを示す数値。 正常値は35%

白血球(WBC)

白血球の数を示す数値。 正常値は7000/μl

血小板(Plt)

血小板の数を示す数値。 正常値は20万/μl

以上のように日本語か英語の略語で書いてあります。
赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット が正常値を下回る場合は貧血。
上回る場合には多血と考えられます。

貧血の原因は赤血球が作れないか、どこかで出血があるか、赤血球が破壊されているのかのいずれかがほとんど。一方、多血の原因は血液疾患による場合もありますが、喫煙や脱水であることが多いです。

白血球が多いときにはどこかに炎症がある可能性があります。肺炎や腸炎など発熱や痛みを伴う症状があるときにもあがります。白血球が少ないケースは比較的まれ。血小板も炎症がある場合にあがることがある一方で、肝機能が悪い場合などには減少します。


次に肝臓・腎臓の機能をチェック
血液検査の詳しい正常値や意義は、書籍やインターネットでも調べることができます。ポイントを押さえて知識を収集し、整理することが大切

次に肝臓や腎臓の機能を見ます。 
肝臓は、以下の項目でチェックします。

AST(GOT)

主には、肝臓のダメージの程度を示す数値。正常値は、30IU/L

ALT(GPT)

主には、ASTと同様に、肝臓のダメージの程度を示す数値。 正常値は30IU/L

LDH

肝臓の他にも筋肉や心臓などのダメージの程度を示す数値。正常値は200IU/L

ALP

肝臓のダメージの他にも、骨の代謝の程度を示す数値。正常値は150IU/L

γ-GTP

肝臓から分泌される胆汁という消化液のうっ滞(流れの滞り)を示す数値。正常値は40IU/L 。

いずれも、これらの数値が前の検査結果と比較して上昇している場合は肝機能への影響が考えられます。
肝炎ウイルスによる場合もありますが、多くは飲酒で、 まれに薬剤性のものもあります。

T-Bil(総ビリルビン)などを測定している場合もありますが、これが3を超えるようになると黄疸(皮膚や眼球結膜が黄色くなる)の症状が見られるようになります。
これも、肝機能悪化の症状の一つ。肝臓へはお酒が大きな影響を及ぼしますが、この指標として用いられるのがγ-GTP。
お酒をよく飲む人は高くなりますが、節酒・禁酒により劇的に改善することが多い数値です。


腎臓の機能は以下の項目をチェック。

尿素窒素(BUN)

腎臓から排泄されるべき物質の一つ。
上昇していると腎機能の低下も念頭に置く。
正常値は20mg/dl以下

クレアチニン(Crn)

BUNと同様に腎臓から排泄される物質の一つ。
正常値は1mg/dl以下

いずれも上昇している場合は腎機能に影響が出ています。BUNは脱水時も上昇するため、Crnが正常でBUNがやや高いだけならあまり心配する必要はありません。

腎機能の指標として電解質のうちのカリウム(K)値もちぇっくしておきましょう。 通常45の間ですが、腎機能が低下すると数値が5を超えます。
また、腎機能の低下は下腿浮腫(足のむくみ)を起こすことがあります。食事はしっかりと食べられているのに、総蛋白(TP)や、アルブミン(Alb)が低下しているようであれば腎臓の精密検査が必要です。

 

最後にメタボ関連項目をチェック
最後には、コレステロールや血糖、尿酸など、生活習慣病やメタボリックシンドロームに関わるものを見ておきましょう。

コレステロールは以下の項目でチェックします。

総コレステロール(T-cho)

血液中のコレステロールの値を示す。正常値は、200mg/dl

LDLコレステロール

コレステロールのうち悪玉とも呼ばれるもの。
正常値は、100mg/dl

HDLコレステロール

コレステロールのうち善玉とも呼ばれるもの。正常値は、50mg/dl

中性脂肪(TG)

エネルギー源として蓄えられる脂肪。正常値は100mg/dl

間違われやすい数値ですが、HDLは「善玉コレステロール」とも呼ばれるものなので数値が高くてよいのです。T-Choが高くてもHDLもやや高い状態なら基本的には心配ありません。HDL以外のものが高くなっている場合(T-cho:220以上、LDL:140以上)や、HDLが低い(40以下)は脂質代謝異常症(いわゆる高脂血症)の可能性があります。

糖尿については以下の項目をチェックします。

血糖(BS)

血液中のブドウ糖の濃度を示す。
正常値は、空腹時:100mg/dl 空腹時以外の時:120mg/dl

HbA1c

糖が結合したヘモグロビンの一種の比率を示す。正常値は5.8%以下

 血糖値(BS)は食事によって変動するため空腹時に採血したのでなければ、基準値を超えていても心配ありません。しかし140を超えるような場合は、いくら食事の直後であっても糖尿病の可能性について検査する必要があります。
逆に血糖値が低すぎる場合(60台以下など)には、低栄養やインスリンの産生が多くなる膵臓の病気などの可能性もあるので医師にご相談下さい。


HbA1cは直前の食事に左右されず、過去12ヶ月の血糖値の平均を反映します。

通常は、5.8以下、治療中の方であれば6.5以下が目標です。
尿酸はお酒の飲み過ぎや食べ過ぎで数値が上がります。7を超える場合は痛風のリスクあり。
前述のγ-GTPと並び、お酒(特にビール)の影響を受けやすい値です。


心配なことがあれば迷わず医師に相談を!
気になる値、気になる症状、心配事がある場合は、医師の診察を。過去の検査結果も持参するのがベスト。

一点注意が必要なのは、上で述べたのはあくまでも一般論ということ。血液検査の結果は非常に参考になる数値ですが、診察の所見やご自身の自覚症状、そして過去の検査データのトレンドなども踏まえた総合的な判断することが大切です。心配なことがあれば、まずは近くの内科を受診するようにしましょう。

最後に、一番してはいけないことをお伝えします。それは、気になる数値があるのに症状がないからと放置すること。せっかく受けた血液検査。しっかり有効活用してください。